2005年10月29日
燃料に水を使う燃料電池
燃料電池は水素と酸素が化学反応して電気と水がでる。電気分解の反対と良く言われる。電気分解の場合は、水に電気を流すと水素と酸素が出てくる。まさしく逆。
前者で出てくるエネルギー量と、後者で必要とされるエネルギー量は同じだ。「エネルギー保存の法則」により、同じになる。同じにならない場合は、何かを計算に入れるのを忘れている可能性が高い。そうじゃない場合は「ノーベル賞モノ」だ。
繰り返しになるが、水を水素と酸素に分離しようとしたら電気が必要になる。仮に電気じゃないにしても、なんらかのエネルギーが必要となる。そうしてエネルギーを消費して作成した水素と酸素を化学反応させても、与えた量以上のエネルギーは絶対に得られない。
ということで、「エネルギー保存の法則」という物理の基本法則を知っていれば、「燃料に水を使う燃料電池」は実現できないことがわかる。いわゆる「永久機関」ってヤツだ。
ところが日経でこんな記事があった。
米カリフォルニア大学の中村修二教授と東京理科大学の研究グループは26日、次世代DVDの光源などとして実用化が進む窒化ガリウム結晶を活用して、水から水素ガスを製造することに成功したと発表した。基礎研究の段階だが実用化できれば、燃料に水を使う燃料電池が実現し、自動車やパソコンなど幅広い製品への応用が期待できる。
おいおい・・・。
記事を最後まで読めばカラクリが分かるのだが、エネルギー源は光である。窒化ガリウム結晶は、単なる光触媒だ。「単なる」ってのは失礼かもしれないが。
記事の表現は、「燃料に水を使う蒸気機関車」に近いものがあるんじゃないかと思う。
さて、記事は無視して、太陽電池との違いを考えてみる。
この光触媒は、出てきた水素を燃料電池のために使うなら、結果として光から電気に変換することになるので、太陽電池と同じことになってしまう。
しかし、光を受けるところとエネルギーを使うところが別の場所にある場合に差が出てくる。
太陽電池で発生したエネルギーを別の場所で使う場合は、電気を溜めなければならないので電池が必要になってくる。電池ってのは実は非常に環境負荷が高く、作るのにエネルギーが必要だわ、寿命で破棄すると環境負荷が甚大だわで、大変だ。真の環境派なら知っていると思うが、現在実用化されているハイブリッドカーは、そこら辺を計算に入れると、普通のクルマよりも環境負荷が高い。
光触媒に話を戻して、これを使う場合は水素を発生させたらタンクに詰めて、使用機器に乗せかえればよい。エネルギーを生産するところ・貯蓄するところ・消費するところ、全てにおいて環境負荷が無いところに、この光触媒のメリットがある。
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